CGSおだき税理士法人 > 管理会計の勉強 > 管理会計とは?制度会計との違いなど

こんにちは、千代田区神田の会計士・税理士の馬場です。私たちCGSおだき税理士法人では、お客様へご提供する会計情報として、制度会計以外に、経営者の方々にとってより有益となります管理会計による会計情報もご提供しております。

 

管理会計は会社の業績把握や業績予測をするのに非常に適していますので、経営者や責任者の方にぜひ活用していただきたい会計です。今回はそんな管理会計について書きたいと思います。

 

管理会計とは?

 

管理会計という言葉を耳にされることもあるかと思いますが、一体、管理会計とはどういった会計なのでしょうか?

 

堅い表現をしますと、

 

管理会計とは、財務数値を経営者の意思決定に役立たせたり、会社の全体や特定の組織単位の業績を測定する為の会計情報を提供する会計制度

 

とうことになります。

 

イメージが湧きづらい方もいらっしゃるのではないかと思います。

 

管理会計と対比される言葉として、制度会計というものがありますので、より理解を深めていくために、これらの2つの言葉を比較して見ていきましょう。

 

管理会計と制度会計の目的

 

まずは制度会計についておさらいをしてみたいと思います。

 

『制度会計』とは、株主や銀行、税務署などに提出する決算書を作成するための会計制度のことを言います。つまり経営者の皆さんが毎年、決算のときに目にする貸借対照表や損益計算書は、制度会計によって作成されています。

 

制度会計のメインの目的は、会社の1年間の業績結果や財政の状態を外部の第三者に報告することにありますが、もし、それぞれの会社が独自のルールで決算書を作ってしまったらどうなるでしょうか?

 

その独自のルールを知らなければ決算書の内容が良いのか悪いのか判断できません。また、異なるルールで作成されたものを比較することはできませんので、同業他社比較など他の会社との比較分析もできなくなってしまいます。そのため、外部へ報告するための決算書は、誰が作っても同じで、誰が見ても理解できるものとなるように一定のルールが必要となります。

 

このように一定のルールに基づいて決算書が作成される会計制度のことを制度会計と言います。

 

一方、管理会計とはどういったものなのでしょうか?

 

管理会計とは、財務数値を経営者の意思決定に役立たせたり、会社の全体や特定の組織単位の業績を測定するための会計情報を提供するための会計制度です。簡単に言いますと、管理会計は、経営者や部門責任者など、会社の内部の人が必要とする会計情報を作成する会計なのです。会社の内部で使うものなので作成ルールに特に決まりはなく、それぞれの会社が独自にルールを決めて良いのです。

 

とはいえ、管理会計にも業績管理や損益予測に役に立つような損益計算書の作成の仕方があります。その損益計算書のことを『変動損益計算書』と言います。

 

制度会計と管理会計の違いは、損益計算書の違いとして顕著に現れてきます。

 

管理会計と制度会計の損益計算書の違い

 

では、それぞれの損益計算書から具体的な違いを見て行きましょう。

 

まず、制度会計で作成される損益計算書です。

 

制度会計の損益計算書
科 目金 額
売上高100,000
売上原価70,000
売上総利益30,000
販売費及び一般管理費20,000
営業利益10,000
営業外収益0
営業外費用0
経常利益10,000
特別利益0
特別損失0
税引前当期純利益10,000
法人税等4,000
税引後当期純利益6,000

 

 

次に、管理会計で作成される損益計算書(変動損益計算書)です。

 

管理会計の損益計算書
科 目金 額
売上高100,000
変動費50,000
限界利益50,000
固定費40,000
営業利益10,000

 

 

それぞれの損益計算書を営業利益の部分まで上から見比べてみますと、売上原価と変動費、売上総利益と限界利益、販売費及び一般管理費と固定費といったところが異なることがわかります。

 

このような違いが出るのは、制度会計で作成される損益計算書と管理会計で作成される損益計算書のそもそもの作成目的が違うからです。

 

そして、その違いにより経費の分類の仕方が変わってくるのです。

 

制度会計では図表1のように損益計算書を売上総利益、営業損益、経常損益、税引前当期損益、税引後当期純損益に区分することになっていますが、このように区分されているのは、制度会計の損益計算書の作成目的が、どれだけの利益をどのように獲得したかを示すことにあるためです。

 

例えば、売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いたものとなりますが、この売上原価の内容は財務会計のルールによって『売上高に対応する商品等の仕入原価又は製造原価』と決められています。

 

このように制度会計では、利益を得るために、どのような経費を使ったか?という観点から経費を分類することになるのです。

 

変動損益計算書では、図2のように売上高から変動費を差し引いて限界利益を求め、そこから固定費を差し引いて営業利益を算定します。このような形になるのは、変動損益計算書の作成目的が、売上げによって得られた利益から固定的な経費を回収して、なおかつ利益を上げられているかを示すことにあるからです。

 

このように変動損益計算書では、経費を変動費か固定費かという観点から分類することになるのです。

 

変動費とは、売上高に比例して発生する経費のことで、例えば、仕入経費や外注費、その他にも配送費などが該当します。
固定費とは、売上高に比例せずに発生する経費のことで、例えば、人件費、家賃、減価償却費など売上が無くても固定的に発生する経費のことを言います。基本的には変動費以外の経費が対象となります。

 

変動損益計算書上の経費分類
変動費固定費
商品仕入高給与・賃金
原料費家賃
外注加工費減価償却費
配送費リース料

 

 

一般的に小売業や卸売業ですと売上原価と変動費はほぼ同じになります。(厳密に言いますと配送費などがありますので、若干、異なってきます。)

 

しかし、製造業や建設業などでは、原材料費や外注費の仕入経費は売上原価であり変動費でもありますが、その他にも製造部門の人件費や製造機械や建築機材の減価償却費などの固定費も制度会計上は売上原価に含まれることになります。

 

このように経費の分類の仕方が異なるため、変動費と売上原価は金額が異なるのです。両者の損益計算書の違いをまとめますと、下記のように言えます。

 

制度会計の損益計算書は、売上高を上げるために必要となった経費を、売上高と直接的に関連する経費(売上原価)と間接的に関連する経費(販売費及び一般管理費)に分けた上で、本業からの利益(営業利益)をどれだけ稼いだかを示したものとなります。

 

管理会計の損益計算書(変動損益計算書)は、売上によって得た限界利益により、固定的に発生する経費をどれだけ回収して、なおかつ利益を獲得できたかを示したものとなります。

 

つまり、制度会計ではどのようにして利益を得たか?という観点から、管理会計では固定費をどれだけ回収できているか?という観点からそれぞれの損益計算書が作られることになります。

 

このように制度会計と管理会計には、損益計算書の内容に大きな違いがあるのです。

 

まとめ

 

今回は、管理会計の基本的なことについて書きました。

 

本日の話のまとめ

 

・管理会計の目的は、財務数値を経営者の意思決定に役立たせることです。

 

・メリットは、将来の損益予測や業績把握がし易いことです。

 

・管理会計による損益計算書を『変動損益計算書』と言います。

 

・変動損益計算書は、経費を変動費とは固定費に分類して作成します。

 

・売上高から変動費を差し引いたものを『限界利益』と言います。

 

・制度会計と管理会計の違いは損益計算書に顕著に現れます。

 

次回は管理会計のメリットについて具体的に数値を使って見て行きたいと思います。