CGSおだき税理士法人 > 管理会計の勉強 > 管理会計のメリットとは

こんにちは、千代田区神田の会計士・税理士の馬場です。

 

前回は管理会計の基本的なことについて書きました。

 

前回記事:「管理会計とは?制度会計との違いなど

 

今回は具体的な数値を使い、管理会計が制度会計に比べてどのようなメリットがあるかを見て行きたいと思います。

 

管理会計のメリット

 

管理会計の大きなメリットとしては以下の2つをあげられます。

 

 1.将来予測が立て易い
 2.業績把握がしやすい

 

これらはいずれも経営者や財務担当者からすると極めて重要な視点であります。

 

管理会計の英語訳が「Management Accounting」と訳されるのも納得できますね。

 

これら2点のメリットについて、ある会社(以下A 社)を例に制度会計と管理会計の二つの損益計算書で、具体的な数値を使って業績推移の状況を見比べてみましょう。

 

まずはA社の前提条件として以下を設定します。

 

【計算の前提条件】
売上高
1期目=100,000
2期目=200,000
3期目=50,000
売上原価 ※変動比率=50%、固定費20,000
売上高 100,000のとき 変動費 50,000、固定費20,000
売上高 200,000のとき 変動費100,000、固定費20,000
売上高 50,000のとき 変動費 25,000、固定費20,000
販売管理費
 20,000 (固定費=20,000)

これらの前提をもとに、損益計算書で業績の推移を見てみましょう。

 

【制度会計の損益計算書の場合】

1期目2期目3期目
売上高100,000200,00050,000
売上原価70,000120,00045,000
売上総利益30,00080,0005,000
売上総利益率25%40%10%
販売費及び一般管理費20,00020,00020,000
営業利益10,00060,000△15,000


【管理会計の損益計算書(変動損益計算書)の場合】

1期目2期目3期目
売上高100,000200,00050,000
変動費50,000100,00025,000
限界利益50,000100,00025,000
限界利益率50%50%50%
固定費40,00040,00040,000
営業利益10,00060,000△15,000

 

両方とも営業利益は同じですが、売上総利益と限界利益が異なっています。

 

また、管理会計の損益計算書では、限界利益率は毎期一定ですが、制度会計の損益計算書の場合は売上総利益率が毎期変動しています。
これは売上原価の中に固定費が含まれているからです。固定費が売上高の増減に応じて金額が変わらないため、率が変わってしまうのです。

 

さて、A社は、4期目は営業損失から脱却することを目標としております。
その場合、最低限、どのくらいの売上高をあげればよいでしょうか?

 

営業損失の脱却、すなわち営業利益がゼロになるように売上高を設定すればよいのですが、その売上高の水準のことを『損益分岐点売上高』と言います。

 

損益分岐点売上高は、下記の式で求めることができます。

 

  損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率 

 

A社の固定費は40,000で、限界利益率は50%ですので、損益分岐点売上高は80,000となります。
(損益分岐点売上高80,000=固定費40,000 ÷ 限界利益率50% )

 

さらにA社は5期目に営業利益を20,000とすることを目標に掲げました。
この場合にはどのくらいの売上高をあげればよいのでしょうか?

 

営業利益20,000を達成する売上高は120,000となります。
損益分岐点売上高を少し応用すれば簡単に求めることができます。

 

60,000の限界利益を上げればよいので60,000を50%で割り返せば求めることができます。

 

目標売上高120,000=(固定費40,000+目標利益20,000)÷限界利益率50%

 

【3期~5期の変動損益計算書】

3期目4期目計画5期目計画
売上高50,00080,000120,000
変動費25,00040,00060,000
限界利益25,00040,00060,000
限界利益率50%50%50%
固定費40,00040,00040,000
営業利益△15,000020,00


このように管理会計の損益計算書(変動損益計算書)ですと、限界利益率が一定なので簡単に利益計画や売上計画を立てることができるのです。

 

そのため、管理会計は経営者の意思決定に役立つ会計と言われるのです。

 

ちなみに、制度会計ですと、売上高に応じて売上総利益率が変わってしまうので、販売費及び一般管理費÷売上総利益率で損益分岐点売上高を求めることができませんし、また、簡単には売上高から営業利益を計算できませんね。

 

このように、管理会計の変動損益計算書によれば、将来の損益予測や業績把握がし易いというメリットがあるのです。

 

まとめ

 

本日の話をまとめます。

 

・『限界利益率』は売上高が変わっても一定。

 

・『営業利益率』は売上高が変わると変動することがある。

 

・営業利益をゼロにするための売上高を『損益分岐点売上高』と言い、固定費÷限界利益率で求めることができる。

 

・変動損益計算書は限界利益率が一定のため利益計画や売上計画を立て易い。

 

管理会計は業績を管理したり業績を予測するのにとても役に立つ会計です。

 

また、変動損益計算書の仕組みは非常にシンプルです。

 

是非これらの知識を活用し、皆様の経営にご活用ください!